「そんなのおかしいです。私、なにも聞いていません。だいたい、先週末に彼は私と会う約束をしていたんですよ?」
「ですから、急に決まったんです」
「それはなぜですか?」
「社内の人事についてはお話しできません」
誠実な彼が、黙ったままいきなりいなくなるなんてありえない。
急な事情ができたなら、真っ先に私には話をしてくれるはずだ。彼はそういう人だから。
「言えなかったんじゃないでしょうか。話し合ってもお互いに嫌な思いをするだけでしょう?」
そういえば、私が出張に行く前、彼はこんなことを口にしていた。
『実は凛音に大事な話があるんだけど……』
飯塚さんは『急に決まった』と言ったけれど、もしかしたら彼は先に、フランス行きの話を聞いていたのかな?
……いや、違う。あのときの彼の表情は楽しげだったから、そうではないと思う。
「とにかく一度、彼に会わせてください」
「ですから、フランスにいるとお伝えしたはずです」
「だったら電話……ビデオ通話とか」
「なにも告げずに行った。失礼ですが、これが答えなんじゃないですか? あなたとは終わりにする気なんですよ」
瀬良さんのことを疑ってはいない。けれど、彼女の辛辣な言葉が心にずしんとのしかかった。
顔がこわばり、ショックを受けたせいで思考がピタリと停止してしまう。
「ですから、急に決まったんです」
「それはなぜですか?」
「社内の人事についてはお話しできません」
誠実な彼が、黙ったままいきなりいなくなるなんてありえない。
急な事情ができたなら、真っ先に私には話をしてくれるはずだ。彼はそういう人だから。
「言えなかったんじゃないでしょうか。話し合ってもお互いに嫌な思いをするだけでしょう?」
そういえば、私が出張に行く前、彼はこんなことを口にしていた。
『実は凛音に大事な話があるんだけど……』
飯塚さんは『急に決まった』と言ったけれど、もしかしたら彼は先に、フランス行きの話を聞いていたのかな?
……いや、違う。あのときの彼の表情は楽しげだったから、そうではないと思う。
「とにかく一度、彼に会わせてください」
「ですから、フランスにいるとお伝えしたはずです」
「だったら電話……ビデオ通話とか」
「なにも告げずに行った。失礼ですが、これが答えなんじゃないですか? あなたとは終わりにする気なんですよ」
瀬良さんのことを疑ってはいない。けれど、彼女の辛辣な言葉が心にずしんとのしかかった。
顔がこわばり、ショックを受けたせいで思考がピタリと停止してしまう。



