あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~

 読み終わった手紙をそっと封筒へ戻したあと、放心状態に陥った。
 彼女があんなウソさえつかなければ……と、怒りの感情が湧いていいはずなのに、こんなふうに謝られたらそうできなくなったのだ。

 この三年のあいだ、彼女は自分の過ちが露見するのを恐れていたのだと思う。真実を知られたら、瀬良さんのそばにいられないから。
 彼を心から愛するがゆえに歪んだ行動に出てしまい、結局去らなくてはならなくなったけれど。
 
「飯塚さんがいなくなって瀬良さんは大丈夫なの? 敏腕秘書だったんでしょう?」

 鷲尾デパートの創立記念パーティーのとき、飯塚さんの姿がなかったのは、すでに退職していたからだ。
 ふと、あの場にいた男性たちがひそひそと話していたことを思い出した。

『須南社長……大丈夫か?』
『話がかみ合わないことも多いと聞くよな』

 一部とはいえ記憶を失っている瀬良さんを、これまでフォローしてきたのは飯塚さんだったはず。
 その彼女がいなくなったとなれば、途端に困るのではないかと心配する気持ちが湧いた。

「フレンチレストラン『シェ・オートルフォワ』。そこで、凛音がこれをプレゼントしてくれたんだよな」

 彼はやわらかい笑みをたたえつつ、スーツの内ポケットからペンを取り出してテーブルに置いた。
 ひったくりに遭ったときに助けてもらったお礼として、私が彼に贈ったリシェスのボールペンだ。
『Sera.S』と、刻まれた彼の名前が見えた途端、胸の中にある様々な感情がごちゃ混ぜになって涙がにじんだ。