あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~

 飯塚はこれまで非常に忠実だったが……人間には〝魔が差す〟ことがある。
 骨折していてベッドから動けず、スマホが壊れたのを好機と捉え、パソコンから不正にログインして操作したのだ。
 そんな悪事をはたらいておきながら、そのあとも素知らぬ顔でそばにいたのか?

「なぜそんなまねを……?」
「なぜ? 本当にわからないんですか?」
「ああ」
「安斉さんが邪魔だったからです。三年前、急に現れて、あっという間に社長の心を奪った。私は何年も想ってきたのに……」

 飯塚はそう言い、腹立たしいと言わんばかりに顔をしかめる。あまりの独りよがりな言い分に俺はあきれ、思わず深く息を吐いた。

「社長は私の気持ちに気づいてますよね? あなたが好きなんです」

 彼女から向けられている好意には薄々気づいていた。単なる秘書がここまで献身的にはなれないはずだから、きっと別の感情があるのだろう、と。でも、俺はこれまでずっと一定の距離を保ってきた。

「人を好きになる気持ちは尊いものだ。だからといって、なにをしてもいいという理由にはならない」
「社長……」
「君は安斉を傷つけ、俺の記憶を操作しようとしたんだ。自分の都合で」
「ひどい人ですね。記憶を失くした社長を一番近くで支えてきたのは私ですよ?」

 そうだ、わかっている。気の利く飯塚に頼りすぎていた俺がいけないのだ。〝社長と秘書〟という枠を超えた感情を彼女に抱かせてしまった。