あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~

「社長就任の挨拶文ですが、原稿を作っておきました。ご参考までに」
 
 飯塚が常務室へやって来て、印刷された書類を俺に手渡した。
 こちらから頼まなくても早々に作成してくるのだから、彼女は本当に優秀な秘書だと思う。
 ボールペンを持ったまま受け取ろうとしたのがいけなかったのか、手が滑ってぽとりと床に落としてしまった。そばにいた飯塚がすぐさまそれを拾い上げる。

「ああ、すまない」
「リシェスのボールペン、愛用されていますね」

 リシェスは高級感のあるデザインとなめらかな書き心地がいいと昔から人気を博している。俺も仕事で使っているが、ストレスを感じさせない優れものだ。

「これ……いつから使ってるんだろうな」

 ボールペンに刻まれた『Sera.S』の文字をそっと親指でなぞりながら、ひとりごとのようにそうつぶやいた。
 あたり前のように毎日触れているが、実はこれがどうやって俺の手もとにきたのか記憶にない。

 我が社の製品だから、そばにあったものを使い始めたのだろうと、最初は深く考えなかった。しかし、心の中でずっとなにかが引っかかっていた。