あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~

 ケガの治療のため、仕事はしばらく休まざるをえなかった。
 一般的に鎖骨骨折は、固定期間とリハビリ期間を含めると、全治までに三カ月ほどかかるからだ。
 会社では、俺が事故に遭って負傷したことだけが伝えられ、一年間の記憶がないことは伏せられている。

『社員を不安にさせないためだ』

 社長の父からそう言われれば、従うしかなかった。
 医者から聞いたが、記憶はすぐに戻るとは限らないそうだ。一過性かもしれないし、一生このままかもしれない。
 仕事に関しては飯塚がフォローしてくれるから問題ないと思う。しかし、社長の息子で常務の俺が、一部分だけとはいえ記憶がないというのは体裁が悪いのだろう。

 事故から二カ月後に仕事復帰しても、その翌月に骨折が完治しても、消えた記憶は戻らなかった。
 焦るな。そのうち思い出す。ポジティブにそう考えるようにしていたが、そのまま三年が過ぎた――。

 もうすぐ新しく〝リュンヌ〟シリーズが発売になる。
 既存の〝リシェス〟シリーズの後継として、俺が三日月のモチーフを提案してデザインを洗練させたもので、ようやく世に送り出す諸々の準備が整ったところだ。

 それと同時に、取締役会で父の会長就任と、俺の社長就任が満場一致で決まった。
 俺の記憶が欠けていることは、一部の人間にしか伝えていない。だが、なにも問題なく仕事に取り組めていて、父からも信頼を得られていた。