あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~

「頭を強く打っていますから……記憶が混同しているのかもしれないですね」

 医者がそう告げた途端、事故の知らせを聞いて駆けつけた両親の顔に悲愴感が漂った。
 それはそうだろう。記憶がないだなんて知ったら心配するに決まっている。
 
「まったく覚えていないのか? 自分が誰なのかも?」

 真剣な顔で尋ねる父に対し、俺は即座に首を横に振った。

「それはわかってる。父さんや母さんのことも、会社のことも。でも、今日に関しては覚えていない」

 病室にやって来た秘書の飯塚から、午前中におこなっていた仕事の内容や、午後から会議の予定が入っていたことを聞いたけれど、なんの話をしているのかまったくわからなかった。
 新しく取引を開始したクライアントの社名やプロジェクトの案件も、知っているはずだと言われても思い出せない。

 どれを覚えていて、なにに関しての記憶がないのか……翌日以降も確認していった。
 ひとつひとつていねいに紐解いていく。すると、直近一年くらいの記憶がないとわかった。
 それ以前のことは覚えているのに、最近の記憶はほとんど消えてしまっていると言ってもいい。

 担当医師に伝えたところ、頭を強く打ったせいで一時的に喪失しているのだろうと診断を受けた。