「驚いた。子どもがいたのか。……幸せそうだな」
やっぱり伝えなければよかったと、後悔する気持ちが押し寄せた。
まるでほかの男性と愛し合って授かったような言い方をされて、胸に大きな傷が広がっていく。
「ずいぶん変わっちゃいましたね。まるで別人みたい。信じられない。私は、そんなふうになにもなかったみたいに振るまえません」
「え?」
「すみません。なんでもないです。私はこれで失礼します」
心の奥に閉じ込めていたものをぶちまけそうになり、あわてて口をつぐんだ。
今日は仕事で来たわけだし、今さら文句を並べてたててもどうにもならないもの。
深く一礼したあと、彼の横を通り過ぎた。
「待って」という声がうしろから聞こえたけれど、私は振り返ることなく足早に建物の外に出て息を整える。もう立っているのが精いっぱいだ。
『もしかして俺の子か?』
『ひとりにさせてすまなかった』
心優しい彼ならば、きっとそんな言葉を返してくると、私は心のどこかで期待していたのだと思う。
バカだなぁ……と自分自身にあきれ、大きなため息が出た。
でもこれで、やっと昇華できる気がした。
先ほど目の前にいた彼は、昔の須南瀬良とは違う人物だったから。
初恋の人で、心から愛した瀬良さんは、もうどこにもいないのだ――。
やっぱり伝えなければよかったと、後悔する気持ちが押し寄せた。
まるでほかの男性と愛し合って授かったような言い方をされて、胸に大きな傷が広がっていく。
「ずいぶん変わっちゃいましたね。まるで別人みたい。信じられない。私は、そんなふうになにもなかったみたいに振るまえません」
「え?」
「すみません。なんでもないです。私はこれで失礼します」
心の奥に閉じ込めていたものをぶちまけそうになり、あわてて口をつぐんだ。
今日は仕事で来たわけだし、今さら文句を並べてたててもどうにもならないもの。
深く一礼したあと、彼の横を通り過ぎた。
「待って」という声がうしろから聞こえたけれど、私は振り返ることなく足早に建物の外に出て息を整える。もう立っているのが精いっぱいだ。
『もしかして俺の子か?』
『ひとりにさせてすまなかった』
心優しい彼ならば、きっとそんな言葉を返してくると、私は心のどこかで期待していたのだと思う。
バカだなぁ……と自分自身にあきれ、大きなため息が出た。
でもこれで、やっと昇華できる気がした。
先ほど目の前にいた彼は、昔の須南瀬良とは違う人物だったから。
初恋の人で、心から愛した瀬良さんは、もうどこにもいないのだ――。



