「デマントイドを吸収してまで、美月に勝とうとする。
その、思いの強さ。それも、才能じゃないのか?」
テルは話を続ける。優しく、目を細めて。
「幼等部の時、オマエと美月とかけっこ勝負してさ。
オマエは、美月に勝つまで何回も競争してた。
本当に、何度も、何度も。
先生にとめられても、泣きながら。
その、粘り強さが、今のオマエをつくってる。そうだろ?」
ああ、そうだ。覚えてる。
楓はいつも全力で勝負を挑んできたっけ。
わたしがちょっと手を抜くと、すぐにバレて、楓を怒らせちゃって……。
泣きながら「本気を出して!」って言う楓。
それを何度も聞いて、わたしは人との勝負では、
絶対に手を抜かないって決めたんだ。
勝負の大切さを、楓は教えてくれた。
それから、楓はずっと走るのを練習してた。
そしてついに、わたしに勝ったんだ。
そのあとも、ずっと、ずっと、楓は走り続けてた。
「おれが知ってる楓は、負けず嫌いで、努力の塊。
走る才能がないって自分で言いながらも……。
どんなことがあっても、走ることにくらいついているヤツだ。
そんなオマエがおれの友だちってことに、おれは誇りをもってるんだ」
テルの熱を帯びた言葉に、楓の緑の瞳の輝きがおさまっていく。
「……やめてよ」
がく、と楓はひざをついた。その体は震えている。
わたしとテルは顔を見合わせ、うなずきあった。
わたしは、そっと楓をうしろから包みこんだ。
「楓、わたしは……、楓の才能を、楓より信じてる。
走る才能も、負けず嫌いなところもね。
だって、わたしは、楓のことが大好きだから」
「……っ!」
一瞬、緑の光が楓の体を包んだ。でも、それは徐々に収まっていく。
「ははっ、『負けず嫌い』も、才能か」
こちらを振り向いた楓の目には、涙がたまっていた。
もうそこに、緑の光はない。
「わたし、大切なことを忘れてた。
わたしは走るのが何よりも好きだってこと。
そして、美月のことが好きで、嫌いで、一生わたしのライバルだと思ってること」
「楓……!」
「わたしも、美月のことが、好き。大好き。
でもね、同じくらい、美月のこと、嫌いだから。
なんでこんなに足速いのよアンタ」
言いながら、ぽろぽろと楓は涙を流す。
「うん、うん……。正直に言ってくれて、ありがとう」
「ふふ、アンタって、やっぱりいいヤツ。
やっぱり、美月のこと、好きの割合の方が大きいかも。
……ひどいことして、ごめんね」
わたしたちは、泣きながら抱き合い……、そのまま、わたしは緊張が解けて意識を失った。
こうして、楓とデマントイドガーネットとの百メートル走バトルは幕を閉じたのだった。
その、思いの強さ。それも、才能じゃないのか?」
テルは話を続ける。優しく、目を細めて。
「幼等部の時、オマエと美月とかけっこ勝負してさ。
オマエは、美月に勝つまで何回も競争してた。
本当に、何度も、何度も。
先生にとめられても、泣きながら。
その、粘り強さが、今のオマエをつくってる。そうだろ?」
ああ、そうだ。覚えてる。
楓はいつも全力で勝負を挑んできたっけ。
わたしがちょっと手を抜くと、すぐにバレて、楓を怒らせちゃって……。
泣きながら「本気を出して!」って言う楓。
それを何度も聞いて、わたしは人との勝負では、
絶対に手を抜かないって決めたんだ。
勝負の大切さを、楓は教えてくれた。
それから、楓はずっと走るのを練習してた。
そしてついに、わたしに勝ったんだ。
そのあとも、ずっと、ずっと、楓は走り続けてた。
「おれが知ってる楓は、負けず嫌いで、努力の塊。
走る才能がないって自分で言いながらも……。
どんなことがあっても、走ることにくらいついているヤツだ。
そんなオマエがおれの友だちってことに、おれは誇りをもってるんだ」
テルの熱を帯びた言葉に、楓の緑の瞳の輝きがおさまっていく。
「……やめてよ」
がく、と楓はひざをついた。その体は震えている。
わたしとテルは顔を見合わせ、うなずきあった。
わたしは、そっと楓をうしろから包みこんだ。
「楓、わたしは……、楓の才能を、楓より信じてる。
走る才能も、負けず嫌いなところもね。
だって、わたしは、楓のことが大好きだから」
「……っ!」
一瞬、緑の光が楓の体を包んだ。でも、それは徐々に収まっていく。
「ははっ、『負けず嫌い』も、才能か」
こちらを振り向いた楓の目には、涙がたまっていた。
もうそこに、緑の光はない。
「わたし、大切なことを忘れてた。
わたしは走るのが何よりも好きだってこと。
そして、美月のことが好きで、嫌いで、一生わたしのライバルだと思ってること」
「楓……!」
「わたしも、美月のことが、好き。大好き。
でもね、同じくらい、美月のこと、嫌いだから。
なんでこんなに足速いのよアンタ」
言いながら、ぽろぽろと楓は涙を流す。
「うん、うん……。正直に言ってくれて、ありがとう」
「ふふ、アンタって、やっぱりいいヤツ。
やっぱり、美月のこと、好きの割合の方が大きいかも。
……ひどいことして、ごめんね」
わたしたちは、泣きながら抱き合い……、そのまま、わたしは緊張が解けて意識を失った。
こうして、楓とデマントイドガーネットとの百メートル走バトルは幕を閉じたのだった。



