ジュエル★バトル ~わたしが水晶の巫子!?~

「よーい、スタート!」

 環くんの号令とともに、わたしたちは駆け出した。
 楓の体が、風のようにしなり、わたしを置き去りにしていく。
 早い! でも……。わたしのモードチェンジは、すでに終わっている!
 モード:ローズクォーツ!
 わたしの髪飾りが、バラの花になってるのに、楓は気づいていなかった。

魅了(チャーム)!」

 わたしがさけぶと、無数のバラの花びらがあたりに出現した。
 わあっと、歓声が上がる。
 その花びらが、楓を包み込んだ。
 すると……。

「え……、緑、くん?」

 楓がぽつりと言った。
 その足が徐々に遅くなっていき……、最終的に、とまった。

「ウソ、なんでこんなところに? 
えっ、わ、わたしのことが、『好き』? 
そんな……!」

 楓は荒々しい空気から一転、
 顔を真っ赤にさせて、何事かをつぶやいている。
 ローズクォーツ。和名は、紅水晶(べにすいしょう)
 この石には、ギリシャ神話に登場する、愛と美の女神アフロディーテにまつわる逸話がある。
 アフロディーテの吐息が水晶にかかった瞬間、
 透明だった水晶がバラ色になり、ローズクォーツが生まれたんだって。
 見るものをとりこにする女神様にちなんで、
 このローズクォーツモードの時の能力は、「魅了」なんだ。
 
 今、楓が見ているのは、きっと楓の推しである緑くんの幻覚。
 デマントイドガーネットの力で、楓の都合のいいように「幸運」が働く。
 その力を逆手にとったんだよ! 

〈美月! 今だ!〉

 イリスの声に、わたしは最後の力を振り絞って走る。
 息が苦しい。ひゅうひゅうとのどが鳴る。ケガが回復しきってないから、痛い。

「楓! 起きろ! オマエの敵がゴールしちまうぞ!」
 
 キィンッ! と耳に響く声で、デマントイドの叫ぶ声がした。
 まずい、楓が目をさましちゃう!
 ぜいぜい、と息が荒い。
 後ろから、楓の気配がする。
 
 あと、二十m。楓が、すぐ後ろにいる。
 あと、十m。横に、並んだ!
 あと、五m。ほぼ、互角!
 
 でもね、絶対に負けられないの。わたし、楓のことが、大好きだから!

〈そのまま、行け! 美月!〉
「美月、がんばれ! 負けるな~!」

 イリスやみんなの応援を背にして、勝ったのは……。