「美月さ~ん、大丈夫?」
ふわ、と優しい、甘い声。
なぜかここから離れた場所に、環くんがいる。
「ごめんね、遅くなって。
水場があってよかった。ハンカチ濡らしてきたよ~」
ハンカチ? 濡らしてきた? どうして、そんなことを……?
わたしと同じ疑問をもったのか、わあわあとわたしを責め立てていた声がやんだ。
その間に、環くんはわたしのもとへ来てかがみこみ、わたしのそばによりそう。
「ああ、痛そう……。血が出てる」
はっとした。そうだ、わたし、転んだから体中にすり傷ができちゃったんだ。
環くんは、グラウンドの砂のついたわたしの傷口を、
そっとハンカチでぬぐっていく。
「こんなになるまで、がんばってくれたんだね。……ありがとう」
環くんはひどくつらそうな顔をしながら、それでもわたしにほほ笑んだ。
優しい「ありがとう」が、身に染みて……。わたしは、思わず泣き出してしまった。
「た、環くん、わたし、負けちゃった」
「うん」
ボロボロと、熱い涙が流れ落ちる。
「勝たないと、楓を、みんなを、守れないのに」
「がんばったね」
環くんはわたしの涙をハンカチで優しくぬぐってくれた。
「ひっく。テルが、わたしのかわりに罰ゲーム受けて、うう、馬になっちゃって」
「……そっか」
「わたし、わたし……。テルの代わりにもう一度戦わなきゃ」
「まずは、休んでから。ぼくが、ううん、ぼくたちみんなが……。
少しでも、楓さんの体力を消耗させるから」
「え?」
「いい? テルが身代わりになったってことは、
それだけ美月さんの力に勝機があるってこと」
生徒たちひとりひとりの顔を見回しながら、環くんは話を続ける。
「だから……。美月さんが全力を出せるように、まずはぼくたちが戦うんだ」
環くんが、聞いたこともないような力強い声を出した。ふわっと風がふきぬける。
「勇気は十分、美月さんからもらった。そうでしょ⁉」
その声に、迫力に、みんなは……。
「わかった! おれ、戦うよ!」
「ごめん、天川さん。おれたち、全部天川さんに押し付けて……」
「美月ちゃん、ひどいこと言って、ごめんね」
「わたしも、ごめん……。最低だった」
みんな……! 砕け散ったと思った心のカケラが、じわっと熱をもつ。
涙があふれて、とまらない。でも、これは悲しみや悔しさの涙じゃない。
わたし、うれしいんだ。
〈美月! 今まで放っておいてごめん!
大丈夫だったのか? 心のパワーがずいぶん減ってた時もあったが……〉
イリスの声が頭の中でした。
〈大丈夫。もう、迷いは晴れたよ。わたし、絶対、楓を解放して、みんなを助ける〉
〈……わかった。じゃあ、作戦会議だ!〉
見えないけれど、イリスがほっとしているのが伝わってきた。
待っててね、楓。絶対、助けてあげるから!
ふわ、と優しい、甘い声。
なぜかここから離れた場所に、環くんがいる。
「ごめんね、遅くなって。
水場があってよかった。ハンカチ濡らしてきたよ~」
ハンカチ? 濡らしてきた? どうして、そんなことを……?
わたしと同じ疑問をもったのか、わあわあとわたしを責め立てていた声がやんだ。
その間に、環くんはわたしのもとへ来てかがみこみ、わたしのそばによりそう。
「ああ、痛そう……。血が出てる」
はっとした。そうだ、わたし、転んだから体中にすり傷ができちゃったんだ。
環くんは、グラウンドの砂のついたわたしの傷口を、
そっとハンカチでぬぐっていく。
「こんなになるまで、がんばってくれたんだね。……ありがとう」
環くんはひどくつらそうな顔をしながら、それでもわたしにほほ笑んだ。
優しい「ありがとう」が、身に染みて……。わたしは、思わず泣き出してしまった。
「た、環くん、わたし、負けちゃった」
「うん」
ボロボロと、熱い涙が流れ落ちる。
「勝たないと、楓を、みんなを、守れないのに」
「がんばったね」
環くんはわたしの涙をハンカチで優しくぬぐってくれた。
「ひっく。テルが、わたしのかわりに罰ゲーム受けて、うう、馬になっちゃって」
「……そっか」
「わたし、わたし……。テルの代わりにもう一度戦わなきゃ」
「まずは、休んでから。ぼくが、ううん、ぼくたちみんなが……。
少しでも、楓さんの体力を消耗させるから」
「え?」
「いい? テルが身代わりになったってことは、
それだけ美月さんの力に勝機があるってこと」
生徒たちひとりひとりの顔を見回しながら、環くんは話を続ける。
「だから……。美月さんが全力を出せるように、まずはぼくたちが戦うんだ」
環くんが、聞いたこともないような力強い声を出した。ふわっと風がふきぬける。
「勇気は十分、美月さんからもらった。そうでしょ⁉」
その声に、迫力に、みんなは……。
「わかった! おれ、戦うよ!」
「ごめん、天川さん。おれたち、全部天川さんに押し付けて……」
「美月ちゃん、ひどいこと言って、ごめんね」
「わたしも、ごめん……。最低だった」
みんな……! 砕け散ったと思った心のカケラが、じわっと熱をもつ。
涙があふれて、とまらない。でも、これは悲しみや悔しさの涙じゃない。
わたし、うれしいんだ。
〈美月! 今まで放っておいてごめん!
大丈夫だったのか? 心のパワーがずいぶん減ってた時もあったが……〉
イリスの声が頭の中でした。
〈大丈夫。もう、迷いは晴れたよ。わたし、絶対、楓を解放して、みんなを助ける〉
〈……わかった。じゃあ、作戦会議だ!〉
見えないけれど、イリスがほっとしているのが伝わってきた。
待っててね、楓。絶対、助けてあげるから!



