ジュエル★バトル ~わたしが水晶の巫子!?~

「お願いします、楓さま!
どうか、おれの挑戦権を美月に与えてやってください。
美月の罰ゲームは、おれが受けます。どうか、この願いを聞いてください!」

 そんな……、やめて、やめてよ、テル! 
 こんなの、テルらしくないよ!

「あはははっ! まっさか、アンタが土下座するなんてねぇ」

 楓は悪意のある顔つきで、心底面白そうに笑った。

「は~、笑った、笑った。
うん、いいよ。テルの挑戦権を美月にあげる。
で、そのかわり、テルに罰ゲームね!」

 ぱちんっと楓が指をならすと、バチバチッと緑の光がテルを包みこんだ。
 テルの影が姿を変えていくのを、わたしはただ見つめることしかできなかった。
 緑の光がはれると、そこには……、黒い小さな馬がいた。
 馬は気絶しているようで、ぐったりと地面に倒れこんでいた。
 周りの生徒たちは、もうさわぐこともしなかった。
 静かな絶望が、あたりを支配していた。

「テル、くんが……。ううっ」

 女子たちのすすり泣く声。
 男子たちも、あきらめ顔をしたり、じっと下を向いていたりしている。

「さて、どうする? 美月。今すぐリベンジする?」

 楓がくるりとこちらを向いた。
 わたしはまだ、へたりこんだままだ。
 今起きていることが、悪夢みたいで……。信じられなくて。

「美月、がんばってよ!」

 ひとりの子が、声を上げた、それに続いて、他の生徒たちも叫びだす。

「なんか知らないけど、天川も変な力もってるんだよな? 
それでなんとかならないのか?」
「そうだよ、美月ちゃんしか、勝てないんだよ!」
「天川、なんとかしてくれよ!」

 ……どう、すればいいの? ……怖い。怖いよ!

「月影のエースなんでしょ?」

 その言葉が、わたしに突き刺さった。
 そうだ、わたしは、月影のエース。
 みんなのために、がんばらないと……。

「わたしをレギュラーからはずしてまで試合出てたじゃん!」

 え?

「そうだよ! わたしだって、試合に出る時間減らされたんだから!」

 そんな、そんなの、知らない。わたしは、ただみんなのために……。

「ウチらの活躍うばった分、今、がんばってよ!」

 バリン、と心が砕け散る音がした。
 みんな、「月影のエース」って言ってわたしを頼りにしてくれたと思っていたのに……。
 心の中では、そんな風に思っていたなんて。

「あ~あ。月影のエースさまはたいへんだねぇ。
……少しは自分の立場を思い知った?」

 くすくすと笑っていた楓が……、すっと目を細めて冷たい表情になった。
 もしかして……。楓も、月影のエースを、うとましく思ってたの?
 ……わからない。

 もう、ダメだ。
 わたし、何のために勝負してるのか、わかんなくなっちゃったよ。
 涙がじわりと浮かんでくる。