ハルカとマドカ

 「そんなに大荷物でどうしたの?」
 僕は放課後、声をかけられた。
 僕に声をかけたのは幼馴染の双子女子、ハルカとマドカだ。
 ハルカとマドカは一卵性の双子で顔がよく似ているが、ハルカが長髪、マドカがボブと髪型が違うので見分けはつきやすい。
 「最近学校に置いてる教科書とかにラクガキされるんだ。だから全部持って帰る」
 「えー! ひどーい!」
 声をあげたのはハルカだ。
 双子でも性格は違って、ハルカは活発だが、マドカはおとなしい。
 「なんて書いてあるの?」
 ハルカは続ける。
 「全部は見てないけど、大好き、とか愛してる、とか……気味悪いよな」
 「きもちわるー!」
 ハルカは両手で口をおさえながら言った。
 「じゃあ、帰るから」
 「うん、またね」
 マドカが答えて手を振った。
 「気をつけろよー!」
 ハルカも手を振った。

 帰宅後、僕は改めて教科書を見てみた。
 そこにはやはり『愛してる』や『いつも見てる』と油性マジックで書かれている。
 「……ん?」
 1つの教科書が目に留まった。
 「『付き合って』……『マドカ』!?」
 『マドカ』と名前が書かれていたのだ。
 信じられないが間違いない。このラクガキの犯人はマドカだ。
 どうしてこんなことを……。僕はすぐに電話した。
 「マドカ!? お前、僕の教科書にラクガキしたのか!?」
 『えっと……それは……』
 マドカはしどろもどろに答えたかと思うと、すぐに電話を切ってしまった。
 しょうがない。明日学校で問い詰めるしかない。

 次の日の朝。
 僕が学校に行くと、正門で騒ぎが起きていた。警察もやってきている。
 「飛び降り自殺だって!」
 誰かが叫んでいるのが聞こえた。
 「今日は休校です! 家に帰ってください!」
 先生も叫んでいる。
 僕は最悪のシナリオがよぎった。ラクガキがバレたマドカが自殺したのではないかと。
 いや、まさかな。
 僕は自分の家に戻ることにした。

 帰り道の住宅地。
 誰かが立っているのが見えた。……あれは、ハルカだ。
 ハルカも僕の方を見た。
 「よかった。うまくいって」
 ハルカはにっこり微笑んだ。
 「わたしがマドカを突き落としたの。だって、邪魔者はいらないもんね?」