「あの、すみません!」
思いきって声をかけてみれば、こちらに背を向けていた男の人はビクリと肩を震わせた。
わたしがいることに気づくと、うろたえた様子で後ずさりする。
「そこに男の子が倒れていますよね? 意識がないみたいですし、早く病院に連れていったほうがいいと思うんですけど……!」
「……こ、こいつは、オレが責任をもって病院に連れて行くから、大丈夫だ。お前は帰っていいぜ」
「でも……」
近づけば、倒れていた男の子が、ピクリと指先を動かした。
「……ここから、逃げろ……そいつは、誘拐犯だ……」
すごく小さな声だったけど、確かに聞こえてきた“誘拐犯”という言葉。
わたしは眉を顰めたまま、顔色を悪くしている男の人に目を向ける。
「……もしかしてお兄さん、悪い人なんですか?」
「っ、くそ! 知られちまったからには、生かしておけないな……! ボウズには悪いが、一緒についてきてもらうぜ」
今のわたしは体操着を着ているのもあって、完全に男の子だと思われているみたいだ。
まあ、女の子相手だったら見逃してもらえたかと言ったら、そんなこともなさそうだけど。
男の人が懐から取り出したのは――鋭利なナイフだ。
だけど、そんなもので怯むようなわたしじゃない。



