そこに立っているのは、碓氷琉夏くんだ。
碓氷くんは、ちょうど大きな棚に隠れる位置にいたわたしの存在には、気づいていないみたい。
棚の陰からそっと顔を出してみれば、怖い顔をして碓氷さんを睨みつけている。
「また俺の後をつけさせてただろ。言っただろ、俺にボディーガードなんかいらないって」
「お前こそ、またボディーガードを巻いたじゃろう。それで誘拐されそうになっていては、いらないという説得力も皆無じゃな」
「……うるさい。とにかく、今後も俺に、ボディーガードなんていらないから」
碓氷くんは、最後までわたしの存在に気づくことなく、部屋を出ていってしまった。
室内には、何とも言えない気まずい沈黙が広がっている。
「あの、それじゃあ、わたしはこれで……」
重い沈黙を打ち破るべく、恐る恐る声を発する。
だけど荷物を持ち上げたタイミングで、すぐそばの飾り棚の上に置いてあった花瓶に肘が当たってしまった。
あっ、と思った時には、すでに遅くて。
地面に落下した花瓶は、パリンッ! と大きな音を立てて割れてしまう。



