「はい。今日は、柔道部の助っ人で練習試合に参加してきたんです。ウチ、お父さんが道場をやっていて、わたしも幼い頃から習っていたので」
「ほう、家で道場をやっているのか。それはすごい。実はワシも、幼少のころには空手を習っていたことがあってのう。全国大会に出場したこともあるんじゃ」
「え、それはすごいですね!」
それから碓氷さんと、一時間近くおしゃべりを楽しんだ。
碓氷さんの話は興味深いものばかりで、わたしは夢中になって聞き入ってしまった。
時間が経つのはあっという間で、気づけば時計の針は六時を指そうとしている。
「あ、もうこんな時間だ……わたし、そろそろ帰りますね」
「もう帰るのかね? もっとゆっくりしていけばいいのに」
「あまり帰りが遅くなると、お父さんも心配するので」
「それもそうじゃな。黒木、千陽さんを家まで送ってあげなさい」
「はい、分かりました」
部屋の壁際のほうにずっと控えていた黒木さんは、碓氷さんのボディーガードさんなんだって。
「よろしくお願いします」って頭を下げてから、壁際に置かせてもらっていた荷物を持とうとすれば――突然、扉がバンッと大きな音を立てて開かれた。



