「さっき倒れていたのは碓氷琉夏。ワシの実の孫じゃ。琉夏は身代金目当ての連中から誘拐されたりすることがよくあってのう。常にボディーガードをつけてはいるんじゃが、毎度毎度、琉夏が巻いてしまうんじゃ。それで攫われていては意味がないというのに……全く、困ったもんじゃ」
「何だか、大変そうですね」
ちゃっかり美味しいケーキと紅茶をいただきながら、碓氷さんの話を聞く。
身代金目当てで誘拐だなんて、やっぱりドラマの中でしか聞いたことがないような話だ。
お金持ちっていえば、好きなものを何でも買えて、素敵な家に住めて、贅沢三昧の生活を送っているようなイメージがあったけど……お金持ちの人にだって、大変なことや苦労することがたくさんあるみたい。
「そういえば、お嬢さんの名前は何というのか聞いてもいいかのう」
「あ、自己紹介が遅くなってすみません。わたしは結城千陽といいます! 中学二年生です」
「おお、琉夏と同い年じゃな。千陽さんは、何か武道をたしなんでいるのかな?」
「え、どうして分かったんですか?」
「持っていたのは、胴着袋じゃろう?」
そういえば柔道部の胴着、洗って返そうと思って、持って帰ってきていたんだった。



