「あの、本当に大丈夫ですから。わたし、もう帰りま…「黒木」
おじいさんが名前を呼べば、さっきの屈強そうなお兄さんが現れた。
「失礼します」
わたしの目の前まで歩いてきたお兄さんにポカンとしていたら、突然抱き上げられてしまう。
「……って、ちょっと、何するんですか!?」
「車までお運びします」
わたしを軽々と抱きかかえたお兄さんによって、路地を出たところに停まっていた黒塗りの車に、あっという間に乗せられてしまった。
そこには、まだ眠ったままの男の子も乗っている。
……っていうかこの車、ものすごい高級車だよね? もしかしてこのおじいさん、お金持ちの人なのかな?
「よし。出してくれ」
最後におじいさんが乗車すると、車は緩やかに動きだした。
(あれ? もしかして、わたしが誘拐されてる……!?)
想定外な展開に、不安で胸がドキドキしてきた。
だけど、このおじいさん、悪い人ではなさそうなんだよね。
男の子と一緒の写真だって持っていたから、孫だっていう話も嘘ではなさそうだし。
(とりあえず、今車を降りるのは危ないし、大人しくしていよう。車が停まったタイミングで、危なそうな感じがしたらすぐに逃げればいいよね)
ひとまずジッとしていることに決めたわたしに、おじいさんが自己紹介をしてくる。



