「ああ、そんなに警戒せんでもいい。ワシは、そこに倒れている子の保護者じゃ」
「保護者、ですか?」
「ああ、本当じゃ。証拠は……ほら、これでどうじゃ?」
おじいさんが見せてくれたスマホの画面には、ものすごく嫌そうな顔をしたこげ茶色の髪の男の子が、おじいさんと一緒に、入学式の看板の横に立っている写真が表示されている。
「あ、本当だ……あの、失礼しました」
「いや、むしろ孫を助けてくれてありがとう。ちーっと目を離したすきに姿が見えなくなってな、皆で慌てて捜していたんじゃよ。無事でよかった。君は命の恩人じゃな」
おじいさんの後ろから音もなく現れたのは、真っ黒なスーツに身を包んだ、屈強そうなお兄さんだった。
倒れている男の子を抱き上げて、路地を出ていく。
「さて、お嬢さん。何かお礼をしたいんじゃが、今から時間はあるかのう?」
「え? そんな、お礼なんて大丈夫ですよ」
「そうじゃ、うちに美味しいケーキがあるんじゃよ。よかったら食べにくるといい。ご馳走させておくれ」
「……ケーキですか?」
甘い誘惑に、心が揺れ動く。
だけど学校帰りに、ましてや知らない人の家についていくなんて、よくないことだし……ケーキにはすごく惹かれちゃうけど、ここは我慢しないと。



