あれは、わたしがまだ六歳だった時の話だ。
わたしの家では、代々『ボディーガード』をしていた。
ボディーガードっていうのは、特定の人の身の安全を守るのが仕事なの。
もう亡くなっているおじいちゃんも、お父さんも、年の離れたお兄ちゃんも、ボディーガードの仕事をしている。
だけどわたしは、ボディーガードになんて、全然興味がなかった。
わたしの家では道場を開いていて、わたしも物心ついた時から武術を習っていたんだけど……。
「将来、千陽もボディーガードの仕事をする必要はないよ。千陽の好きなことをしたらいいさ。だけどね、千陽も自分の身くらいは自分で守れるよう、強くなりなさい」
お父さんは、わたしが武術に興味がないってことも分かっていたみたいだけど、毎日の稽古には参加しなさいって言われていた。
お父さんたちはボディーガードの仕事をしているし、仕返しにくるような悪いやつらだっているかもしれない。
わたしが狙われた時のことを考えてそう言っていたんだって、今なら分かる。
だけど……稽古は厳しいし、疲れるし、全然楽しくない。
だから、こっそり稽古を抜け出した時があったんだよね。
胴着姿のまま一人で道を歩いていたら、同い年くらいに見える男の子が、すごく焦った顔をして走ってくるのが見えたの。



