空を知らない君に贈る唄


2⼈だけじゃ無理だ――

そんな焦りを抱いていた澄華たちの予想を、嘲笑うかのように、

美織と時川は圧倒的な実⼒を⾒せつけた。

錐⼑が閃くたび、異喰の急所である“⽬”が正確に貫かれ、巨体が地響きを⽴てて

崩れ落ちていく。

無駄がなく、迷いもない。

それは戦闘というより、完成された作業のようだった。

「すっげぇ!!」

「クソ強え!!!」

陽⽃や⻯也が、思わず叫ぶ。

戦場であることを忘れたような、興奮混じりの声だった。

その隣で怜奈も、胸を撫で下ろすように息をつき、⽬を輝かせて⼆⼈の

背中を⾒つめている。

恐怖よりも、憧れが勝ってしまった表情だった。

澄華も同じだった。

先ほどまで全⾝を⽀配していた恐怖はいつの間にか薄れ、胸の奥に

⼩さな安堵が芽⽣えていた。

(……⼤丈夫、なのかもしれない)

そんな気の緩みがいけなかったのだ、きっと。

それが、間違いだった。

――異喰は案外弱いのかもしれない。

――あれなら⾃分たちでも……。

いつの間にか、そんな考えが⼼に⼊り込んでいた。

美織たち『牡丹』と、⾃分たち『百合』階級の間に横たわる、

決定的な差にも気づかないまま。

その時だった。

美織と時川が、⼿前にいた数体の異喰を倒し終え、ほんの⼀瞬、戦線が

落ち着いた――

その隙間に、怜奈がぽつりと⼝を開いた。