(……雲、っていうやつ?)
本当に綿菓⼦みたいだ、と思った。
触れたら溶けてしまいそうで、でも、決して⼿が届かない場所にある。
視界に⼊るものすべてが、初めて⾒る光景だった。
美しい。
その⼀⾔では、到底⾜りなかった。
感動、という⾔葉でも⾜りない。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられて、呼吸の仕⽅すら忘れてしまう。
瞬きするのすら惜しくて、ただ必死に⽬に焼き付けようとした。
この景⾊を、⼀瞬たりとも逃したくなかった。
――その時。
ネックレスを握りしめた指先に、懐かしい温度が蘇る。
『どうだ、綺麗だろう?』
不意に、⽗の声が聞こえた気がした。
澄華ははっとして、辺りを⾒回す。
(……幻聴、だ。)
そう思っても、否定しきれなかった。
胸の奥に、確かに⽗の存在を感じてしまったから。
気づけば、頬を⼀筋の涙が伝っていた。
それを拭おうとも思わず、ただ流れるままに任せる。



