空を知らない君に贈る唄


遠くでは、まだ前線部隊の出発が続いている。

緊張と不安が消えたわけではない。

それでも今この瞬間、澄華の胸は不思議と軽かった。

(……⼤丈夫)

そう思えたのは、きっと⼀⼈じゃないと実感できたからだ。

三⼈の笑い声はやがて⾃然と静まり、またそれぞれの場所へと

戻っていく。

しかし、その間に⽣まれた⼩さな温度は、これから始まる地上での

任務へ向かう澄華の⼼を、確かに⽀えていた。

そうして、ついに後⽅⽀援部隊にも移動の指⽰が下った。

整列していた隊列がゆっくりと動き出し、階段の⼊⼝へと吸い寄せられ

ていく。

地下の⼀番端にそびえる、果てしなく⻑い階段。

そこから微かに流れ込んでくる空気は、湿り気のある地下とはどこか

違う匂いを帯びているように感じられた。

(……いよいよ、だ)

澄華が胸の奥でそう呟いた、その時だった。

「澄華!」

背後から聞き慣れた声がして、軽い⾜⾳とともに誰かが駆け寄って

くる。