陽⽃もまた、少し⼒の抜けた声で、
「……氷室班⻑……すっごいな……」
と漏らす。
凛はその⾔葉には答えず、ただ⾷器を⽚付け終えると、
普段通りの低く落ち着いた声で、
「ところでお前ら……準備はできてんのか?」
とだけ告げた。
「え……準備って?」
陽⽃がぽかんとした顔で訊き返す。
声に含まれる驚きと焦りが、澄華の⽿にもはっきり届いた。
凛は眉間に軽く皺を寄せ、少し呆れたような表情で答えた。
「地上に出る準備に決まってんだろ。」
その⾔葉に、澄華と陽⽃は数秒間、⼝を開けたまま固まった。
まるで時が⽌まったかのように、⼆⼈の視界の端に凛の姿がぼんやりと残る。
澄華の体の奥底で、⾎が熱く湧き上がるのを感じた。
(地上……!?)
頭の中をその⼆⽂字がぐるぐると回り、⼼臓が早鐘のように打ち出す。
昨⽇までの疲労も不安も、すべて吹き⾶ぶような⾼揚感が、
澄華の全⾝を包んだ。
太陽の下で、⾃由に⽣きる。
⽬の前にあるのは、その夢への第⼀歩だ。
凛は⼆⼈を鋭く⾒据え、低くため息をつく。
「上進隊の職務って⾔ったら、それしかねぇだろ。
お前ら、なにするために⼊ったんだ?」
その声は嫌味を含んでいるが、澄華には届かなかった。
⽿には⼊るが、意識の焦点は地上への期待で張りつめている。
⽬の前に広がるのは、胸を⾼鳴らせる未来の光景だけだ。
澄華の⽬は⼀点に凝視され、まるで他のものは視界に⼊らない。



