空を知らない君に贈る唄


その⾔葉に。

凛の動きが、ほんの⼀瞬、⽌まった。

視線が、澄華へと向く。

だが、深く踏み込むことはしない。

数秒の沈黙のあと。

「……そうか。」

それだけを、低く返した。

それ以上の⾔葉はなかった。

慰めも、同情も、詮索も無い。

ただ、事実を受け取っただけの声。

澄華は、その反応に、少しだけ安堵する。

(……聞いてこない。深⼊りしない。)

それが、今はありがたかった。

キッチンの⽅から、陽⽃の声が⾶んでくる。

「ちょっとー!

そっち静かすぎて逆に怖いんですけど!!」

「……うるせぇ。」

凛が短く返す。

「すいません!」

陽⽃の軽い返事とともに、フライパンの⾳が響いた。

その⾳に包まれながら。

澄華は、ソファの上で静かに⼿を握りしめた。

⽗の背中。

空の話。

あの⽇の⾻⽚の重み。

それらを、まだ胸の奥にしまったまま。

――この班で、⽣きていくのだと。

⼩さく、確かに、思った。