空を知らない君に贈る唄


フライパンの⾳、包丁の⾳、卵を割る軽快な⾳。

それらを、澄華はソファに座ったまま、ぼんやりと眺めていた。

(……陽⽃、⼿慣れてるなぁ。)

昨夜のはしゃぎようからは想像もつかないほど、動きに無駄がない。

その横顔を⾒ながら、澄華は⼩さく息を吐いた。

――そのとき。

隣に座る凛が、ふいに⼝を開いた。

「……⾬宮。」

名を呼ばれ、澄華はわずかに肩を揺らす。

「お前の苗字……どっかで聞いたことがある。」

低く、探るような声。

「お前の両親も、上進隊か?」

⼀瞬。

澄華の動きが⽌まった。

胸の奥に、冷たいものが落ちる感覚。

だが、それは⻑く続かなかった。

澄華はふっと⼩さく息をつき、肩の⼒を抜く。

「……ええ、まぁ。」

視線を前に向けたまま、静かに続けた。

「⽗が、上進隊でした。」

少し間を置いて。

「……三年前に、殉職しましたけど。」