「……っ、よかった……ほんとに……」
震える声。
喉を絞るような、必死に堪えていた感情が⼀気に溢れ出た声だった。
澄華は⼀瞬、どうしていいかわからず、宙に浮いたままの⼿を
彷徨わせる。
やがて、そっと――陽⽃の背中に⼿を回した。
「陽、⽃……?」
その呼びかけに、陽⽃の肩がびくりと跳ねる。
「……っ、お前さぁ……」
くぐもった声。
顔を上げようとしない。
「お前……お前さ……」
⾔葉が続かない。
代わりに、ぎゅっと⼒を込めて澄華を抱きしめる。
澄華の隊服が、陽⽃の震えをはっきりと伝えてきた。
「……もう、起きないかと思った……」
その⼀⾔で、澄華の胸が締め付けられた。
「……ごめん……」
絞り出すように⾔うと、陽⽃は⾸を横に振る。
「違う……違うだろ……」
ぽた、と。
澄華の肩に、温かいものが落ちた。
「……謝るなよ……」
陽⽃の声は、もう完全に泣いていた。
「怒ってるわけじゃない。でもお前が……なんも⾔わずに⼀⼈で⾏く
から……戻ってこないかもしれないって……ずっと……ずっと……」
⾔葉の端々が途切れ、呼吸が乱れる。
澄華は胸の奥がじくじくと痛むのを感じながら、陽⽃の背中を
撫でた。
ゆっくり、ゆっくりと。
「……⽣きて戻ってきたよ」
その⾔葉に、陽⽃の腕の⼒が、さらに強くなる。
「バカ………」
震えた声でそう呟いてから、陽⽃はようやく顔を上げた。
涙でぐしゃぐしゃになった顔。
⽬は⾚く腫れ、唇は噛みしめすぎて⽩くなっている。
⾔葉にならないまま、陽⽃はもう⼀度澄華を抱きしめた。
その背後で、床に落ちたままのコップから⽔が、静かに広がっていた。



