「……澄華」
⽗は、少しだけ声を低くして⾔った。
「怖かったよなぁ。逃げたくなったよなぁ。」
澄華は、こくりと⼩さく頷く。
「……それでも」
⽗は、澄華の額に、⾃分の額を軽く当てた。
「逃げずに⽴ち向かった。⼗分、誇っていいんだ。」
澄華は、涙で滲む視界の中で、必死に⽗を⾒上げる。
「でも……伊織くんも、怜奈も……美織さんも死んじゃった……!」
⾔葉が詰まり、声が震える。
「……なんで……私だけ……」
⽗は少し困ったように眉を下げてから、優しく⾔った。
「⽣き残ることは、罪じゃない」
その⾔葉が、胸に深く落ちる。
「澄華は、⽣きて背負うことを選んだんだ」
⽗は、澄華の肩に、両⼿を置いた。
「それは、俺が出来なかったことだ。……だからな」
⽗は、ゆっくりと微笑んだ。
「胸を張れ。格好悪くてもいい。震えててもいい。
…………⽣きて、誰かを守れる⾃分でいろ」
⾵が強く吹いた。
草原が⼤きく揺れる。
⽗の姿が、少しずつ、透けていく。
「……待って……!」
澄華が叫ぶ。
「まだ……話したい……!……もっと⼀緒に……!」
⽗は、最後にもう⼀度、澄華の頭を撫でた。
「⼤丈夫だ、俺はずっと⾒てる。
だから…………………⾏ってこい!」
その瞬間、世界が、⽩く弾けた。



