空を知らない君に贈る唄


「……3、時の……⽅向……に……」

凛の視線が、鋭くなるのを感じる。

「……時川、班⻑……が……」

「……その、奥……」

⼀度、息を吸おうとしてむせる。

「……陽、⽃……と……⻯、也……も……」

そこで、限界が来た。

視界が完全に⽩く染まり、⾝体から⼒が抜けていく。

「……頼み……ます……」

それが、最 後の⾔葉だった。

澄華の⾝体が、凛の腕の中で完全に脱⼒する。

「……⾬宮?」

呼びかけても、返事はない。

凛は⼀瞬、⻭を⾷いしばり、澄華の顔を⾒る。

⾎に濡れた隊服。

浅く、かろうじて続いている呼吸。

「……っ、クソ」

凛は澄華をしっかりと抱き直すと、静かに、しかし確かな声で呟いた。

「後は任せろ」

その⽬はすでに、三時の⽅向――

異喰が群れる戦場の奥を、正確に捉えていた。

「お前は、もう⼗分やった」

そして凛は、澄華を安全な場所へ運ぶため、⼀歩を踏み出す。

その背には、⽣き残った者の責任と、託された命の重さが、

確かに刻まれていた。