でも――
(違う)
今なら、はっきり分かる。
それは優しさなんかじゃない。
守ることでも、救うことでもない。
ただの、逃げだ。
……だから来たんだ。
それを、時川に伝えるために。
時川の⽬が、どこか――先程までの⾃分と重なって⾒えたから。
必死に、誰かを守ろうとして、⾃分を削り、⾃分を捨てようとして
いるその⽬が。
澄華は錐⼑を握りしめたまま、凛とした表情で時川を⾒据えた。
「誰も失いたくないのは……私だって、同じです」
声は、強かった。
逃げも、迷いもない。
「だから……」
⼀拍、息を吸い、
「だから、来たんです!!!」
その⾔葉に、時川の⽬が⼤きく⾒開かれる。
澄華は、さらに⼀歩踏み出した。
異喰の⾝体が、低く唸る。



