約束を超えた先で、君を待つ。

「月音はよく小説読んでるよな」

「うん。集中できるから」

小説は好きだ。絵が無い分、物語をどこまでも想像できるから。

自分ができないことも、主人公の世界を想像するとわたしもそこにいるような気がして。

この間の夢じゃないけど、空想の中を飛び回る自分を思い描くのは嫌いじゃない。

「おすすめとかある?」

「おすすめかあ……なんだろ。……あ、この間一冊読み終わって、面白かったから貸してあげようか」

「え、いいのか?」

「うん」

よく読むのはミステリーだけど、この間まで読んでいたのはファンタジーものだった。

陽太くんの好みに合うかはわからないけれど、すごく好きな物語だったから陽太くんにも教えてあげたい。引き出しから本を取り出すと、

「はい」

と陽太くんに渡す。

「ありがと」

嬉しそうに受け取り、そのままリュックに入れてくれた。

楽しんでくれるといいなと思いつつ、陽太くんが小説を読んでいるところなんてあまり想像ができないから笑ってしまう。

「どうした?」

「ううん、なんでもない」

「そう? あ、そういえば、マンガ読んだ?」

「あ、うん。読んだよ。すごく面白かった」

「だろ? 次で最終巻なんだ。買ったらまた持ってくるから」

「うん、楽しみにしてる」

ついこの間までどうせわたしは死ぬんだからと諦めかけていたのに、陽太くんのおかげで何かを楽しみに待つという気持ちにまで持ち直すことができた。

病は気からなんて言うけれど、それは本当なのかもしれない。

"まだ生きていたい"

そう思ってからの検査結果は、ほんの少しだけどよくなっていて先生も驚いていた。

それでも命に限りがあることは、変わらない。それはどまでにわたしの身体へのダメージは大きすぎたようだった。