約束を超えた先で、君を待つ。

「な、んで……」

「……ごめん。月音が俺に会いたくないのはわかってるんだけど、でもどうしても声だけでも聞きたくて」

「っ……」

何が起こっているのかがわからない。

どうしてここに陽太くんがいるのかもわからない。

面会は断っていたはず。それなのに、どうして……?

「……もしかして、お母さんから何か聞いた?」

「いや、何も聞いてない。ただ俺が来たかっただけ」

「……そう」

扉を挟んだやりとりは、いつもより少し声を大きくしないといけなくて。

今のわたしでは、それすらつらい。つらいのに。

「……っ、うっ……」

涙が出るくらいに嬉しいと思ってしまうのは、どうしてだろう。

「……月音」

泣いていることを隠したいのに、口を開いたら泣く声が漏れてしまいそうで、必死に唇を噛む。

「月音、そのままでいいから聞いて」

そんなわたしに気付くはずもない陽太くんは、ゆっくりその場で喋り始めた。

「俺、今日で夏休み終わるんだ。だからどうしても月音と話したくて来た。ごめんな。俺、自分でも気付かないうちに月音を傷付けちまったみたいで。面会できないって言われてたのに、こうやってまた来ちゃって。本当にごめん。これで最後にするから」

違う。違うんだよ。陽太くんのことが嫌いになったんじゃない。嫌になったわけじゃない。傷付けられたことなんて一度もない。むしろ、助けられていたのに。救われていたのに。

ただ、わたしが臆病なだけで、こんな姿を見られたくないだけなのに。

このまま勘違いをさせてしまったまま終わりにしていいの?

自分に問いかけるけれど、声を出そうとするとまた涙だけがこぼれ落ちる。