約束を超えた先で、君を待つ。

──陽太くんと初めて会ったのは、二年前。

お互いまだ小学生だったあの時。わたしは長い入院生活と反抗期に入り始めていたため、常にイライラしてピリピリしていた。

出された食事はまともに食べた記憶も無いし、お見舞いに来てくれたお母さんに怒鳴り散らしたり看護師さんの言うことを全く聞かなかったりなんて日常茶飯事だった。

そんな典型的な問題児だったわたしが院内を彷徨い歩いている時に出会ったのが、陽太くんだった。

救急外来にやってきた救急車。そこからストレッチャーで運ばれてきた患者が、やけに元気だったのだ。

「だからー、俺元気なんですって! 見た目ほど重症じゃないから! こんなかすり傷、舐めときゃ治るし!」

「何言ってるの! 動かないでください! 出血しますから!」

「大丈夫なんですって! ちょっと車にぶつかっただけだから! 別にもう痛くないから!」

「それは今感覚が麻痺してるだけです! いいから黙って横になっててください!」

看護師と医者とそんなことを言い合いながら運ばれていくその人は、身体のあちこちから血を流していて見ただけで痛々しい姿だった。黒髪が汚れており、まんまるの目の下には切り傷ができていて。とても"舐めときゃ治る"ような軽いケガには見えない。だけどその人はわたしと目が合うと

「あ、すんませんお騒がせしてますー!」

とニカっと笑いながら処置室に消えていった。痛みなど感じさせないようなその笑顔は、病院には似つかわしくないもので。

わたしは何が何だかわからず、とにかくドン引きしてその場から離れた。すぐに病室に戻って布団に潜り込んだのは、自分には無いキラキラした彼の笑顔が苦しかったからかもしれない。手当たり次第に物や人に当たり散らしている自分が、酷く惨めに思えて直視したくなかったのだ。