約束を超えた先で、君を待つ。

「嫌だよ。検査入院中なんでしょ? 自分の部屋に戻りなよ」

「えー、やだ。暇だし」

「暇なら同室の人と喋ってなよ。大部屋でしょ?」

「そうだけどさー。みんな知らねぇやつなんだよ。俺、ここでの友達は月音だけだから」

陽太くんは入院中は毎度と言っていいくらい、わたしを見つけては病室まで着いてこようとする。どこからやってくるのか、今日みたいに突然現れるから困ったものだ。自分の身体のことに集中して病室で休んでいればいいものを、どうしてわたしなんかに構ってくるのか。

「ねぇ、そのコミュ力は飾りなの? 友達ほしいならわたしに絡んでないで自分の病室で作れば」

「えぇー……月音以上に気が合うやついるかなあ」

「気が……合う……?」

このデリカシー無し男と……、わたしが……?

信じられない言葉に陽太くんを見ると、

「ははっ! んだよ、おばけでも見たみたいな顔して!」

わたしを指差して爆笑してくるからもっとうざったい。

「もういいっ! じゃあね!」

フンっと顔を背け、早く戻ろうと足を動かす。だけどやはり身体は重いから、すぐに陽太くんに追いつかれてしまった。

「あぁもう悪かったって。拗ねんなよ。本当に俺月音しかここに気軽に喋れるやついないんだって」

「知らないよ。じゃあ一人で本でも読んでれば!? 暇つぶしくらいにはなるでしょ」

「え、俺が本読むようなキャラに見える? 真面目っぽいってこと?」

「んなわけないでしょ!? ……はぁ。もういいや、疲れちゃった。勝手にして」

「ははっ、よっしゃー」

ダメだ。ただでさえ憂鬱な毎日なのに、陽太くんがいると余計に憂鬱だ。調子が狂うと言えばいいのか。彼の能天気な空気と喋り方がうざったくて仕方ない。

関わりたくないけれど、そうすると後から余計に面倒くさいことを知っている。断りたくても今みたいに気付けば彼のペースにのまれてしまっていることも多々あるし、こうなったら好きにさせておいて無視するのが一番手っ取り早いだろう。