青井は、個人経営と思われる小さなアトリエに、週に数回顔を出すようになっていた。古い倉庫を改装しただけのような、天井の高い空間だった。壁には油絵、デッサン、未完成のキャンバスが好き勝手に立てかけられ、溶剤の匂いとオイルの匂いが混じり合っている。
画材屋でのアルバイトは順調だった。週に四日ほど、土日は店に出ることが多い。老夫婦が営む店は、市役所がある大通りの端にあって、客はそれほど多くはない。けれど、常連は皆、青井が驚くほど穏やかな顔をして、ゆっくりと喋った。筆の話、紙の話、最近やってきた孫の話。店内の静けさの中に、それらが柔らかく溶けていく。
御前崎に来てから、青井は海の絵ばかり描いていた。水平線、鈍い灰色の波、光の粒が散る明け方の海。本当はそろそろ浪人生として、受験のためのデッサンを鍛えなければとわかっていたが、頭の中に広がるのは海のことばかりだった。
同い年ぐらいの青年がひとり、窓際の席に腰かけ、静かに絵筆を動かしているのを、青井はアトリエに通うたびに見かけた。肩幅が広く、体つきはまるでラグビー選手のようだった。けれど、キャンバスに触れる絵筆は驚くほど繊細で、薄い色を水のように重ねていく様子は、小絲源太郎の絵のようだと青井は思った。柔らかく、淡く、決して強く主張しない色。
ある日、片づけをしているときに、青年がふいに言葉をかけてきた。
「海ばっかり描いてるんですね」
声は低く、落ち着いていた。
「あ、はい。気がついたら、そうなってて」
青年は小さな笑みを見せた。笑ったというより、表情が少しだけゆるんだ。
「まあ御前崎には、海しかありませんからね」
それは冗談めかしていたが、どこかその土地を肯定するような優しい言い方だった。
青年は、松山と名乗った。
彼が描いていたのは、海の向こうに並ぶ風力発電の風車だった。このあたりの海辺に立つ、白い巨大な羽根の塔。潮風に吹かれながら、静かな速度で回り続けるもの。その光景は海と同じくらい、御前崎らしかった。
松山が筆先を休め、少しだけこちらを見た。
「モネは、エトルタっていう海沿いの村で、ずっと海を描いてた時期があるんですよ。朝昼晩で海の色がまるで違って、同じ岩場を何十枚も描いたとか。あなたと似てるなと思って」
「似てる、かな」
「似てると思う。別に、同じくらい上手いとか、そういう意味じゃなくて。海って、ただ見てるだけじゃ足りない人が描くものなんですよ」
青井は返事をしなかった。そのかわり、窓の向こうの光に目を向けた。午後の光はすこし白く、風車の羽根を鈍い銀色に照らしていた。
松山は続けた。
「海は、毎日違う。波も、光も、潮の匂いも。見てるこっちの気持ちもぜんぶ影響して、目に映る海は少しずつ変わる。だから飽きない。だから困る。終わりがないから」
青井は笑った。ほんの少しだけ、息の底が軽くなったような気がした。
松山は再びキャンバスに向き直り、細い筆で風車の影をゆっくりと重ねていった。その手つきは先ほどまでと変わらず静かで、迷いがなかった。強い体つきの中に、そうした静謐があることが、不思議だった。
午後になると、青井はよく、海岸沿いを海風に吹かれながら歩いた。砂浜には、人と犬の足跡が並んで続いている。散歩中の人は、青井を見ると軽く会釈をしていく。ここでは誰も急いでいない。時間の流れがどこか鈍い。
ふと視界の端を、濃い、けれど絵本のクレヨンで塗りつぶしたような青が横切った。海の青とはまったく違う、どこか子どもの落書きめいた青。その鳥は電線に一度とまると、胸を張って澄んだ声を鳴かせた。お腹だけはさび鉄色の赤で、青井は見たことのない鳥だと思った。
スマホを取り出して検索すると、イソヒヨドリと表示された。海のある町に住む鳥で、住宅の隙間やビルのちょっとした凹みに巣をつくるらしい。
その青い鳥はふたたび飛ぶと、海沿いにぽつりとある店の、白く塗られた屋根の下の隙間へと吸い込まれていった。そこに巣があるのだとすぐに分かった。近寄って、そっと影を落とさないように覗いてみる。薄暗い空間に、小さな羽根が三つ四つ、ふわりと寄り添っていた。雛だ。親鳥が短い鳴き声を残して、すぐにまた海側へ飛んでいった。餌を取りにいくのだろう。
その巣の真下に、古い木製の看板が下がっていた。「灯台」と書かれている。ペンキは少し剥げているが、文字はまだちゃんと読めた。店先のガラス戸は曇っていて、店内の様子は外からはわかりにくい。閉まっているのか、開いているのか、判断がつかない。しかしほのかに、コーヒーの匂いが風に混じって漂っていた。それから、パンが焼けたときの、やわらかい小麦の匂いも。
営業しているらしい。中にお客がいる気配はなかったが、イソヒヨドリが巣をつくった店というだけで、青井は少し胸が動いた。小さな命が、ここに居場所を見つけている。そのことが、ただの古びた店を、急に特別なもののように見せていた。自分にも、どこかに帰る場所があるだろうか。そう思うと、この店に一度だけでも入ってみたくなった。
ガラスのドアを押した。からん、と控えめに澄んだ音が鳴った。
少しひんやりとした空気。古い木のテーブルが二つ、窓際に並んでいる。海がちょうど見える角度だった。
カウンターに、白髪まじりの男性が一人いた。ゆっくりとこちらを振り返る。
「いらっしゃい」
その声は、思ったよりも明るく、そして柔らかかった。
青井は返事をした。
「あ、えっと、コーヒーをお願いします」
「はい。ホットでいいですか」
「ホットで」
白洲は軽くうなずき、カウンターの向こうでポットを手にした。動作の一つ一つに無駄がなく、静かだった。店内には音楽も流れていない。
テーブルの上には、誰かが置いていったのか、薄い水彩画のスケッチブックが一冊あった。開かれたページには、海の色が淡く重ねられている。描いた人の呼吸のような線。
白洲がコーヒーを持ってきた。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って、彼はそれ以上なにも言わなかった。
青井はカップに口を近づける。香りが、胸の奥にゆっくりと染みていく。すると、視線は、店の奥に置かれた木の棚へ吸い寄せられた。そこに無造作に立てかけられていた一枚の絵葉書。太陽が昇り始める港の情景。ぼやけた筆触が、光そのものの震えを写し取っている。
「モネ……」
思わず声に出してしまった。
言葉というより、息に近かった。
白洲は、湯気の立つコーヒーポットを拭きながら振り返った。
「ご存じですか」
「はい。好きなんです。……あの、光の揺れの描き方が」
「あなたも絵を?」
青井は少しだけ迷って、そして小さくうなずいた。
「ええ、少し」
白洲は青井の言い方に、どこか遠慮の影を感じた。それを責めるようなことはしなかった。
「ここら辺は海しかないけど、描きたくなる何かがある。エトルタの風景みたいにね」
白洲は棚から絵葉書を取り出し、指先でふちをなぞるように持った。
「人は、同じものを、同じではない時に見ることができるから、絵を描けるんでしょう」
青井は、その言葉を胸の奥に落としこむように聞いた。
少しの沈黙。風の音だけが、窓の外をなぞっている。
店の奥から、かすかな香りが流れてきた。焼きたてのパンの、まだ湯気を帯びた柔らかな匂い。バターの甘さよりも、小麦そのものが呼吸しているような匂いだった。青井は、気づかぬうちにそちらへ視線を向けていた。
「あの、サンドイッチも頼んでいいですか」
「はい。もちろん」
白洲はエプロンを少しだけ整え、カウンターの奥へ消えていった。その背中の動きに、焦りや誇示のようなものはなかった。ただ、毎日の中で何度も繰り返してきた、ゆっくりした手順をそのままなぞるだけの姿だった。
パンを切る音がした。包丁の刃が、焼きたての表面を押すと、すこしだけ空気が抜けるような気配がした。レタスの葉は水気を残したまま、手のひらの上で軽く振られる。トマトは輪切りにされると、静かに赤い表面を見せた。
店内は、海の空気をそのまま入れ替えずに閉じ込めたようだった。波の塩のにおいが、遠くの白いカーテンの端に触れ、柔らかく揺らしていた。風が通り抜けるたび、店の中の時間がわずかに傾くのがわかる。
「お待たせしました」
白洲が皿をそっと机の上に置いた。
パンの切り口が、やわらかな光を吸いこんで、ほのかにあたたかかった。
「とってもおいしそう」
青井はそう言い、手を合わせるようにしてから、ひとつを持ち上げた。
そして、かぶりついた。噛んだ瞬間、小麦本来の味が口いっぱいに広がった。どこか素朴で、やさしく、そしてまっすぐな味だった。余計な香りも、甘さも、装飾もなかった。
それはこれまでに食べてきたパンとまるで違った。
市販のものは、いつだって華やかだった。香りがあって、柔らかくて、口当たりが軽くて、食べる人に考えさせない。
けれど、このパンはちがう。何も隠さない。小麦の味だけが、はっきりと、ひとつだけそこにあった。
おいしいと思った。心の奥が騒ぐほどに。
そして同じだけ、ひどく寂しいとも思った。
余計なものを削ぎ落したものは、いつだって寂しいのだ。きっと、余計なものに囲まれているときのほうが、華やかに見える。飾りは、安心だ。味にも、生活にも、人の心にも。青井は、ゆっくりともう一口かじり、黙った。
白洲はなにも聞かなかった。それを聞かずにいられる店だった。
画材屋でのアルバイトは順調だった。週に四日ほど、土日は店に出ることが多い。老夫婦が営む店は、市役所がある大通りの端にあって、客はそれほど多くはない。けれど、常連は皆、青井が驚くほど穏やかな顔をして、ゆっくりと喋った。筆の話、紙の話、最近やってきた孫の話。店内の静けさの中に、それらが柔らかく溶けていく。
御前崎に来てから、青井は海の絵ばかり描いていた。水平線、鈍い灰色の波、光の粒が散る明け方の海。本当はそろそろ浪人生として、受験のためのデッサンを鍛えなければとわかっていたが、頭の中に広がるのは海のことばかりだった。
同い年ぐらいの青年がひとり、窓際の席に腰かけ、静かに絵筆を動かしているのを、青井はアトリエに通うたびに見かけた。肩幅が広く、体つきはまるでラグビー選手のようだった。けれど、キャンバスに触れる絵筆は驚くほど繊細で、薄い色を水のように重ねていく様子は、小絲源太郎の絵のようだと青井は思った。柔らかく、淡く、決して強く主張しない色。
ある日、片づけをしているときに、青年がふいに言葉をかけてきた。
「海ばっかり描いてるんですね」
声は低く、落ち着いていた。
「あ、はい。気がついたら、そうなってて」
青年は小さな笑みを見せた。笑ったというより、表情が少しだけゆるんだ。
「まあ御前崎には、海しかありませんからね」
それは冗談めかしていたが、どこかその土地を肯定するような優しい言い方だった。
青年は、松山と名乗った。
彼が描いていたのは、海の向こうに並ぶ風力発電の風車だった。このあたりの海辺に立つ、白い巨大な羽根の塔。潮風に吹かれながら、静かな速度で回り続けるもの。その光景は海と同じくらい、御前崎らしかった。
松山が筆先を休め、少しだけこちらを見た。
「モネは、エトルタっていう海沿いの村で、ずっと海を描いてた時期があるんですよ。朝昼晩で海の色がまるで違って、同じ岩場を何十枚も描いたとか。あなたと似てるなと思って」
「似てる、かな」
「似てると思う。別に、同じくらい上手いとか、そういう意味じゃなくて。海って、ただ見てるだけじゃ足りない人が描くものなんですよ」
青井は返事をしなかった。そのかわり、窓の向こうの光に目を向けた。午後の光はすこし白く、風車の羽根を鈍い銀色に照らしていた。
松山は続けた。
「海は、毎日違う。波も、光も、潮の匂いも。見てるこっちの気持ちもぜんぶ影響して、目に映る海は少しずつ変わる。だから飽きない。だから困る。終わりがないから」
青井は笑った。ほんの少しだけ、息の底が軽くなったような気がした。
松山は再びキャンバスに向き直り、細い筆で風車の影をゆっくりと重ねていった。その手つきは先ほどまでと変わらず静かで、迷いがなかった。強い体つきの中に、そうした静謐があることが、不思議だった。
午後になると、青井はよく、海岸沿いを海風に吹かれながら歩いた。砂浜には、人と犬の足跡が並んで続いている。散歩中の人は、青井を見ると軽く会釈をしていく。ここでは誰も急いでいない。時間の流れがどこか鈍い。
ふと視界の端を、濃い、けれど絵本のクレヨンで塗りつぶしたような青が横切った。海の青とはまったく違う、どこか子どもの落書きめいた青。その鳥は電線に一度とまると、胸を張って澄んだ声を鳴かせた。お腹だけはさび鉄色の赤で、青井は見たことのない鳥だと思った。
スマホを取り出して検索すると、イソヒヨドリと表示された。海のある町に住む鳥で、住宅の隙間やビルのちょっとした凹みに巣をつくるらしい。
その青い鳥はふたたび飛ぶと、海沿いにぽつりとある店の、白く塗られた屋根の下の隙間へと吸い込まれていった。そこに巣があるのだとすぐに分かった。近寄って、そっと影を落とさないように覗いてみる。薄暗い空間に、小さな羽根が三つ四つ、ふわりと寄り添っていた。雛だ。親鳥が短い鳴き声を残して、すぐにまた海側へ飛んでいった。餌を取りにいくのだろう。
その巣の真下に、古い木製の看板が下がっていた。「灯台」と書かれている。ペンキは少し剥げているが、文字はまだちゃんと読めた。店先のガラス戸は曇っていて、店内の様子は外からはわかりにくい。閉まっているのか、開いているのか、判断がつかない。しかしほのかに、コーヒーの匂いが風に混じって漂っていた。それから、パンが焼けたときの、やわらかい小麦の匂いも。
営業しているらしい。中にお客がいる気配はなかったが、イソヒヨドリが巣をつくった店というだけで、青井は少し胸が動いた。小さな命が、ここに居場所を見つけている。そのことが、ただの古びた店を、急に特別なもののように見せていた。自分にも、どこかに帰る場所があるだろうか。そう思うと、この店に一度だけでも入ってみたくなった。
ガラスのドアを押した。からん、と控えめに澄んだ音が鳴った。
少しひんやりとした空気。古い木のテーブルが二つ、窓際に並んでいる。海がちょうど見える角度だった。
カウンターに、白髪まじりの男性が一人いた。ゆっくりとこちらを振り返る。
「いらっしゃい」
その声は、思ったよりも明るく、そして柔らかかった。
青井は返事をした。
「あ、えっと、コーヒーをお願いします」
「はい。ホットでいいですか」
「ホットで」
白洲は軽くうなずき、カウンターの向こうでポットを手にした。動作の一つ一つに無駄がなく、静かだった。店内には音楽も流れていない。
テーブルの上には、誰かが置いていったのか、薄い水彩画のスケッチブックが一冊あった。開かれたページには、海の色が淡く重ねられている。描いた人の呼吸のような線。
白洲がコーヒーを持ってきた。
「ごゆっくりどうぞ」
そう言って、彼はそれ以上なにも言わなかった。
青井はカップに口を近づける。香りが、胸の奥にゆっくりと染みていく。すると、視線は、店の奥に置かれた木の棚へ吸い寄せられた。そこに無造作に立てかけられていた一枚の絵葉書。太陽が昇り始める港の情景。ぼやけた筆触が、光そのものの震えを写し取っている。
「モネ……」
思わず声に出してしまった。
言葉というより、息に近かった。
白洲は、湯気の立つコーヒーポットを拭きながら振り返った。
「ご存じですか」
「はい。好きなんです。……あの、光の揺れの描き方が」
「あなたも絵を?」
青井は少しだけ迷って、そして小さくうなずいた。
「ええ、少し」
白洲は青井の言い方に、どこか遠慮の影を感じた。それを責めるようなことはしなかった。
「ここら辺は海しかないけど、描きたくなる何かがある。エトルタの風景みたいにね」
白洲は棚から絵葉書を取り出し、指先でふちをなぞるように持った。
「人は、同じものを、同じではない時に見ることができるから、絵を描けるんでしょう」
青井は、その言葉を胸の奥に落としこむように聞いた。
少しの沈黙。風の音だけが、窓の外をなぞっている。
店の奥から、かすかな香りが流れてきた。焼きたてのパンの、まだ湯気を帯びた柔らかな匂い。バターの甘さよりも、小麦そのものが呼吸しているような匂いだった。青井は、気づかぬうちにそちらへ視線を向けていた。
「あの、サンドイッチも頼んでいいですか」
「はい。もちろん」
白洲はエプロンを少しだけ整え、カウンターの奥へ消えていった。その背中の動きに、焦りや誇示のようなものはなかった。ただ、毎日の中で何度も繰り返してきた、ゆっくりした手順をそのままなぞるだけの姿だった。
パンを切る音がした。包丁の刃が、焼きたての表面を押すと、すこしだけ空気が抜けるような気配がした。レタスの葉は水気を残したまま、手のひらの上で軽く振られる。トマトは輪切りにされると、静かに赤い表面を見せた。
店内は、海の空気をそのまま入れ替えずに閉じ込めたようだった。波の塩のにおいが、遠くの白いカーテンの端に触れ、柔らかく揺らしていた。風が通り抜けるたび、店の中の時間がわずかに傾くのがわかる。
「お待たせしました」
白洲が皿をそっと机の上に置いた。
パンの切り口が、やわらかな光を吸いこんで、ほのかにあたたかかった。
「とってもおいしそう」
青井はそう言い、手を合わせるようにしてから、ひとつを持ち上げた。
そして、かぶりついた。噛んだ瞬間、小麦本来の味が口いっぱいに広がった。どこか素朴で、やさしく、そしてまっすぐな味だった。余計な香りも、甘さも、装飾もなかった。
それはこれまでに食べてきたパンとまるで違った。
市販のものは、いつだって華やかだった。香りがあって、柔らかくて、口当たりが軽くて、食べる人に考えさせない。
けれど、このパンはちがう。何も隠さない。小麦の味だけが、はっきりと、ひとつだけそこにあった。
おいしいと思った。心の奥が騒ぐほどに。
そして同じだけ、ひどく寂しいとも思った。
余計なものを削ぎ落したものは、いつだって寂しいのだ。きっと、余計なものに囲まれているときのほうが、華やかに見える。飾りは、安心だ。味にも、生活にも、人の心にも。青井は、ゆっくりともう一口かじり、黙った。
白洲はなにも聞かなかった。それを聞かずにいられる店だった。

