「はあ…、はっ、……クソ」
「もうやめなって。風船なんか膨らませられなくても困らないから」
「…もう少しでいける気がするんだ」
肺に空気をいっぱい溜めて、ふーーーっと、一息。
血管が圧迫されて、だんだん赤くなってゆく顔。
けれど何度チャレンジしたところで鳥海が咥えるゴム風船はびくともしなかった。
「…女子たちでさえ膨らんでたんだぞ。女にできて男の俺ができないなんて……情けなさすぎる」
ふざけないでよマッサン。
今日の授業、実験で使う風船くらい最初から膨らませておいてよ。
激的に肺活量が足りていない。
それは彼が普通よりも弱い心臓を持った何よりの証。
すぐに息切れしては苦しそうで心配になるから、私はこうして授業が終わったあとも頑固なクラスメイトを見守っていた
「もうそんなの気にする時代じゃないよ、鳥海」
「…………」
「ジェンダーレス、多様性。個人の色のままあっていい時代なんだから」



