1945年、君を迎えに行く。





「…俺の父さんは、自分で腹を切って死んだ」


「……え…」



それは、突然。

柔らかくなっていた空気感が突如、今さっきの緊迫感に戻ってしまう。



「俺のせいで…切ったんだ。そりゃあ、将校である男の息子が兵士にすらなれない出来損ないともなればな、わからんでもない」



若ければ戦争に行くのが当たり前。

この小さな集落でも、彼の顔馴染みたちはみんなして赤紙を受け取ったという。


唯一、赤紙が送られなかった鳥海は。


町中から「臆病者」だと蔑まれ、いびられ、責められ、責任を感じた父親が自ら己の腹に刃を通したのだと。



「俺は…ここに存在しちゃならないんだ」


「……あんた、友達、いるの」


「………そんなもの考えたこともない」


「だったら私がなってあげる」


「…………」



ほんのわずか驚いている青年の前に差し出した、右手。



「花折 志緒、17歳。…よろしく」



覚えてる?

あんたが転校してきた日。


教卓の隣から移動して、まっすぐ私の席に向かってきたよね。

クラスメイトたちはザワザワしてさ、ほんと勘弁してほしかったよ。