「…ありがとう。でも、隼人以上にあの人がそれを受け入れられなかった」
そう言って目線を外した先。
たったそれだけで遺影に写った男性は彼のお父さんなんだと、すぐに分かった。
「どうしても息子を勇敢なパイロットにしたかったのよ、あの人は」
執着もだめね───と、終わったことを受け入れた彼女の眼差しは、すべてが儚く見えた。
そっか……。
彼女の本心はホッとしているんだ。
たとえ息子に病気を患わせてしまったとしても、兵隊になって戦争に行くくらいならと、母親としてホッとしている。
でも、そんな顔は誰にも見せてはいけない。
だからここまで私の目には儚く映るんだ。
「隼人はあんなこと言っていたけれど、居たいだけいてくれていいからね。ここは長野の外れの小さな村だもの。敵の飛行機も通り過ぎていくわ」
「……ありがとう…ございます」
ここはどの世界線なの。
前回のように過去ではあるけれど、ぜんぶ違う。
………わからない。
鳥海 隼人は、兵士にはなれなかったの…?
だったらあの場所の黒糖飴をくれた彼は、だれ…?



