「おまえが見たものは…夢じゃない」
「え?」
「…ただあそこにいた俺は……、俺じゃないんだ」
「…鳥海?ごめん、なんて?」
右折してきた車の音に、震えた声はかき消されてしまう。
なにをそんなに恐れているの。
怖がって怯えているの。
泣きそうな鳥海を前に、この瞬間だけは考えもしていなかった不安が私のなかで渦巻いた。
「っ、俺は…っ」
ピカッッ────!!!
「ッ……!?」
うそっ、なんで、ここで……?
サイコロを落としてないし、気にしてもいなかった。
目をつむってしまうほどのフラッシュと、空間が歪むような浮遊感。
「志緒……ッ!!」
手を伸ばす鳥海は、私を掴めはしなかった。
カチカチカチカチ……。
きた、これだ、この感覚だ。
あのとき初めて体験したすべてが、私の記憶をまた辿って鮮明に蘇らせる。
どんな構造でロジックで、メカニズムで。
そんなことは何ひとつ分からない。
わかっているとするなら、たったのこれだけ。
戻る………また、行くんだ。
1945年に、私は────行く。



