どうして、なんで、そんな顔をしているの…?
穏やかに微笑んで、すべての苦しみから解放されたかのような顔で。
彼は私の腕をそっと離すと、名前を呼び、一歩下がっては静かに敬礼をする。
「陸軍特別攻撃隊、第110振武隊所属、鳥海 隼人。…このたび4度目の出撃命令が下りました」
「…え……?」
「…3度も帰ってきてしまって、情けないばかりだった。だが必ず、今度こそ俺は……敵艦を沈めてみせる」
1度目は燃料漏れ。
2度目はエンジン故障。
3度目は、引き返すほどの悪天候。
帰ってくるたび上官から「覚悟が足りないからだ」と殴られていた彼は。
今度こそ成功してしまうと、思わせてくる表情で。
「短い間だったが、世話になった。…それを俺に言わせるためにまた来てくれたんだと、思うことにするよ」
「……とり、うみ、」
いやだ……、
やめて、聞きたくない。
やっと戻ってこれたんだ。
最後のチャンスを使ってまで、“向こうの”君を……振り払ってまで。
「どうか笑顔で見送ってやって欲しい。このハヤトの名のもとに……俺もまた、笑って征(い)きます」



