「あっ、花折さん…!」
やっと女子トイレから出られた今度は、控えめで震えた声に引き留められる。
彼女は同じクラスの杠(ゆずりは)さんだ。
クラスのなかでいちばん……名前が可愛いと話題の。
「どうしたの?」
「えっと、その……これっ」
「…手紙?」
「うん…。鳥海くんに……渡してもらいたくて…」
こりゃなんとも原始的な。
それもそうか。
あいつはスマホ持ってないんだから。
厚底な眼鏡をかけた杠さんは顔を真っ赤にさせて、私にお辞儀するように頼んでくる。
「…そういうのは自分で渡したほうがいいと思うんだけどな」
「っ、わ、私は……勇気、でなくて…。花折さんはいつも鳥海くんに声かけられてるし、鳥海くんも花折さんのことは名前で呼んでたり…。それに花折さんも鳥海くんを呼び捨て…してるから」



