「行こう鳥海。一緒に未来に───」
「志緒」
形勢逆転。
矛盾なく完璧なシナリオが、本人の意思によって覆される。
「……っ」
自分が何とも愚かで下等な生き物なのかを見抜かれた。
ああそうか、もう、納得したんだ。
自分の道が決まったんだ。
私があなたを救いたいと思ったように、あなたのなかでも守りたい絶対的な何かが抽象的ではなく、形としてハッキリ見えてしまったんだ。
そう思わせてくる眼差しだった。
「陸軍特別攻撃隊、第110振武隊所属、鳥海 隼人。…このたび4度目の出撃命令が下りました」
それは苦を脱却し、己の業を受け入れ、真理を見抜いてしまった人。
敬礼も、口の動きも、スローモーションに映る。
「…3度も帰ってきてしまって、情けないばかりだった。だが必ず、今度こそ俺は……敵艦を沈めてみせる」
情けない───その感情にまだ囚われている部分があるのなら、入り込める余白くらいはある。
いいよ、愚かでも。
いいよ、くだらなくても。
馬鹿げていて子供で、ワガママで我を押し通す強情さの塊に見られようと。
知ったこっちゃないよ、そんなの。



