「ちょっと全体的に塩がな、足りないな」
「え?そう?美味しいよ?」
「そうだ、隣に“しお”があるじゃないか。よしよし、これで……うん、いい感じだ」
「………面白くないんですけど。そっちなんかさっき、梅食べてこーんな顔してたくせに」
「…それは……だいぶひどいな」
「……ねえ!!なんかムカつくっ」
ひどいのは、そんな顔を向け合うことさえ誰にも見つからないような場所じゃないと許されない時代のほうだ。
味わうにもおばちゃんお手製のおにぎりはあっという間で、残りの時間はゆっくり風を感じた。
「あ、おやつあるよ鳥海」
「おやつ…?」
「はい、この前のお返し」
制服のポケットを探って、差し出した飴玉。
黄色の円形は真ん中がくり抜かれており、よく笛にして遊んだものだ。
うまく鳴らないんだよね、案外。
未来の飴玉を、彼はどんな顔をして受け取るのだろう。



