1945年、君を迎えに行く。





「…おばちゃん、ごめん。おにぎりを作ってもらえないかな」


「おにぎり?よかけど…」


「2人ぶん。お願いします」



まともに顔を上げることができない私の背中を擦ってくれていたおばちゃんは、特攻兵からの頼みを受けて勝手場へと向かっていく。

そして見下ろしていた鳥海が、そっと屈みかけてきた。



「…ごめん」



ごめんじゃないよ。

ヤエちゃんに口止めして、勝手に遺言なんか残してひとりで格好つけて、いい加減にしてよ…。



「母さんの五平餅、ちゃんと俺に届いた」



温もりが、ある。
声に温度と震えが乗っている。

手のひら、呼吸、匂い。


ここにいる、彼は確かに存在している。



「鳥海、どこにいくの?」


「…もう少し」



おばちゃんお手製のおにぎりを持って、私の手を引いてゆく鳥海 隼人は。

私がぎゅっと握り返せば、驚いたように足取りが止まりそうになって。


そして、何事もなかったように歩き出す。


亀屋食堂から出て、住宅地をも越えて、基地からも遠ざかった場所。

迷わず林間へとずんずん進んでいく背中に、どこか安心があった。