「………、」
肩を組んで、笑って、「みごと散りましょう、国のため」なんて。
歌までそんなことを言ってくるんだ。
目の前にある時代は、ただただ、かなしい。
彼らの背中が見えなくなるまで見送っていたおばちゃんは、ずっと胸の前で手を握りながら何かを祈っているみたいだった。
終戦は8月。
もうすぐ、もうすぐなのに……。
もう今の私には「日本はどうせ負けるから意味がない」なんて、安易に言えそうになかった。
「シオちゃん…?」
「っ…!」
私の影にふと気づいたのか、食堂の入り口から声が伸びてくる。
カラカラと下駄を鳴らせて、この時代に唯一ある温かさが近づいてきた。
「やっぱりシオちゃんやね!こげんところでどげんしたとよ。ヤエちゃんと一緒じゃなかと?今ちょうど───」
「おばちゃん…っ」
おばちゃん、おばちゃん。
あんなのってないよ。
あんなのって、辛すぎるよ。
たまらなくなって出た声にならない声は、言えない本音は、ぎゅっとつむったまぶたから涙に変わって溢れる。



