「鳥海さん…?ああ!お孫さんですか?」
「え…?…あ…、はい…」
「よかったあ…。家族はいないって言っていたのでとても心配していたんです。おじいちゃんなら3階の3005号室にいらっしゃいますよ。いつも寂しそうに空を見上げているから、会いに行ってあげて」
ドキン、ドクン、ドキン。
胸の鼓動がどんどん大きくなって、重くなる。
歪みの調整は今度、私に何を見せてくるのだろうか。
「…はや……と……、」
【鳥海 隼人】と、確かに病室前には間違いのない名札が掛けられている。
震える手足を動かして、小さくノック。
彼は分かっていたのかもしれない。
こうして私がここに、やってくることを。
「ずいぶん、待たせられたな」
「っ、…隼人、」
「…ああ。こんなしわくちゃになってしまった」
窓際の車椅子。
そこに座って青空を眺めている姿勢のいい後ろ姿が、いつも教室から飛行機雲を追っていた背中と重なった。
その姿は、90歳近い老人だった。
髪も白く、肌には長い時間を生きたシミがあり、声も何もかもが歳を取っている。
けれど面影はあった。



