「お母さん、今日学校休みたい」
「はあ?そんなのダメ。ちゃんと行きなさい」
「え〜…お父さんも会社休んでよ。3人でいよう。今日はずっと」
「ははは、なに言ってるんだ。残業はないから夕飯、3人で食べよう。久しぶりに外食でもするか?」
「あら、いいの?助かるわ〜」
「ちょうど金曜だし、給料日だしな!なにが食べたいか考えておくんだぞ志緒」
お母さん手作りの朝食を食べながら、「はあい」と柔らかい返事をする。
ちょっとだけ照れくさい。
そっか……私、ずっと変な夢を見ていたんだ。
お母さんとお父さんが火事で死んじゃって、私はそれから児童養護施設に預けられて、ちょっとだけ冷めた高校生になっちゃってさ。
そんな、長くて暗い夢を見ていた。
「おかあさん、もう1回私の頬っぺたつねって」
「はいはい。…どう?」
「…いひゃい」
「夢じゃなくてよかったわね。早く食べて準備しなさーい」
痛みがある。
これは夢なんかじゃない。
なにか大きなことを忘れている気がするけれど、そんなものは生活していけば思い出すだろうから。



