頭が真っ白になった。
私がヤエちゃんと玉子丼を食べているとき、君は機体に乗り込んで飛び立ったっていうの…?
この五平餅を渡すことすら、叶えさせてはくれないの…?
会うことさえ、時間を狂わせるってこと…?
なにがダメなの。
大切な人に会いに行って、なにがダメなの。
「伝言、預かっちょっと…っ、どうか強く逞しく…君らしく、生きていってくれ…って」
これが彼の遺言だと。
私に残した、たった唯一だと。
………鳥海、なんで、どうしてよ。
「なんでよお……ッッ!!!」
「っ、シオちゃん…!!!」
錘のような全身を立たせて、五平餅を抱えて私は走る。
基地へ、飛行場へ、彼がいる場所へ。
走るたびに泥が跳ねて、転ぶたびに全身が汚れていく。
まだサイコロは残ってる。
まだ時間はあるんだってば。
「とりうみーーー……っ」
限りなく黒に近い灰の空は、なにも見せてはくれなかった。
思うように翼を広げる青空すら用意してくれない神様が、憎い、にくい。
こんな雨風のなか、彼は最期の瞬間、なにを見るのだろうか。



