「そう…、よかった…。あの子に会うことはできんのかね?」
「鳥海さんはいつも兵士さんたちと機体の点検作業が多かで…一般は立ち入れんのです」
「……じゃあ、これ。あの子に渡してもらってもいいかい?」
どこで止めるべきかとタイミングを図っているうちにも、彼女が手にしていた土産が雨のなか私に渡される。
「五平餅(ごへいもち)、うちの地方の特産品でね。隼人も昔からお腹いっぱいになるまで何本も食べてたんよ」
「……ヤエちゃん、」
渡させてあげようよ。
お母さんの手から息子に、これは渡させてあげないとダメだ。
鳥海がまだ居るなら、それこそ今しか叶わないんだから。
情けなく震える声でヤエちゃんの名前を呼ぶことが、私にできる精いっぱいだった。
「わかりました。必ずお渡しします」
「っ、ヤエちゃん!」
「シオちゃん」
「……っ、」
穏やかに首を横に振るヤエちゃんの目は、残酷なほど、強くてまっすぐ。



