1945年、君を迎えに行く。





元気を出さなくちゃやっていられない。

無理にでも根気強く耐え続けなければ。


“欲しがりません、勝つまでは”
“ぜいたくは、敵だ!”


町中に貼られたチラシや看板を吹き飛ばすように、ヤエちゃんは悪天候のなかでも私の手を引いた。



「おばちゃーん!ごめんまた戻ってきてしもた〜」



連れてこられたひとつの食堂は、外の看板に「軍指定食堂」と書いてあった。


─────亀屋食堂。

暖簾を潜るまでもなく、ふわっと温かい香りが届いてくる。



「じゃからゆったじゃなかと。天気も悪かし、もうちっと休んでいきなって。…あら、ヤエちゃんのお友達とね?」


「シオちゃんっていうの」


「まあ!シオちゃんビショビショじゃなかと!さあ入って入って。寒かったやろう?好きなもんゆってくれたらなんでも出すでね」



お母さんだ───……。


割烹着姿で出てきた初対面の女性を前に、ハッキリとそんな言葉が浮かんだ。

彼女の柔らかな笑みを見るためだけにここに通う人も多いだろう。


それほど底しれぬ安心と愛のようなものがあると同時、「この人を守らなければ」という使命感をも抱いてしまう不思議なひと。