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「─────……うそ……」
目の前に広がった光景を前に、私は意識が遠のいていきそうだった。
煤けた灰の匂いは、鼻を強く刺激してくる。
強く打ちつける雨風のなか、余計にモワッと浮かび上がるのだ。
家屋が燃えたあとを私は知っている。
この匂いを、感覚を、私は知っている。
右も左も黒焦げた平地を見るたびに、心臓がぎゅっと恐怖で鷲掴みされるような痛みが襲ってきた。
「これって…もしかして……」
戻ってきた場所は私が知っている陸軍基地ではなく、民間人が暮らす下町だった。
通り過ぎる人間たちは誰もが参っているのか疲れ切った顔。
「昨夜の空襲はひどかったがね。この雨が昨夜に降ってくれちょったらなあ…」
立ち尽くす私の背後、ひとりのおじさんは独り言のようにつぶやく。
空襲。
予想していた単語が、脳内にすぐ響き渡った。



